美容皮膚科クリニックで受けた「レーザートーニング」という美容医療で顔に火傷を負った時のお話です。
まずこの記事を読まれる前にご理解いただきたい点につきまして。
このページを訪れた方の中には実際に今現在美容皮膚科の施術によって何らかのトラブルが発生してお困りの方もいらっしゃるかもしれません。
この記事はあくまでも私一個人と一クリニックにおける症状及び解決策についての経験談をごく簡単にまとめたものですので、全てのケースに当てはまるという訳ではありません。
非常に似たケースであっても、同じような経過や対応が期待できるという訳ではありません。
あくまでも参考程度に、軽く知恵袋を読むような感覚で読まれた上で、実際の状況に応じて担当の医師やクリニックの担当者の方と納得のいく解決策をお取りください。
美容皮膚科で受けた施術内容
これまで美容皮膚科ではシミ取りレーザーや美白の飲み薬を処方してもらうことがありましたが、顔全体のくすみやたるみが気になるようになり、友人の話などを参考に「フォトフェイシャル」を受けてみようと美容皮膚科の扉を叩きました。
クリニックの医師との話し合いと現在の肌の状態を精査した結果、肝斑のような症状があるため「フォトフェイシャル(フォトRF)」より「レーザートーニング」の方が適切だろう、ということになりそのレーザー治療を受けることになりました。
(フォトフェイシャルとレーザートーニングの違いについてはこちら↓をご覧ください)
施術内容の詳細については過去の記事をご覧いただいたり、実際に施術を受けるクリニックでご自身の症状と合わせてご確認いただきたいのですが、ざっくり言うと「トーニングは、肌に微弱なレーザーを当ててメラニンを徐々に減少させ、シミやくすみ、毛穴の開きなど加齢による肌の悩みを解消しハリや透明感を与える」というような治療とされています。
肌のレーザー治療はいくつも種類がありますが、”トーニングは本来レーザーで悪化させてしまうと言われていた肝斑があっても使えるレーザー治療” というところがポイントのようでした。
そして、他のレーザー治療(フォトフェイシャルなど)と同様、何度か続けることでよりその効果が発揮されるという特徴について説明を受けました。
そこで私はまずお試しで1回施術を受け、肌の反応を見た上で、10回分のチケットを購入しました。
美容皮膚科での施術ミス
初回の施術で特に酷い肌の反応は出なかったため、その後定期的にレーザートーニングを行うこととし、2-3週間〜月1回くらいのペースでレーザー治療を行いました。
5回目の治療の時に事故は起こりました。
普段通り肌を冷却し、レーザーを当てる時、初めに器具を当てた顎の部分にバチバチッという大きな音と共に、それまでには感じたことのない激しい刺激がありました。
トーニングの治療の痛みは個人や部位によって差があり、私の場合はそれまでパチっという軽く弾かれるような痛みを覚えることはありましたが、「メラニンに反応しているんだな」と逆に嬉しくなる程度のものでした。
それが、この時の刺激は明らかに「疼痛」で、「絶対に出力間違ってる」と素人でも分かる異様な刺激レベルでした。
案の定施術してくださっていた看護師は狼狽し、レーザーの機械を確認し、しかしその後正しい出力に戻しレーザー治療を再開しました。
「大丈夫ですか?」と尋ねられたので「ヒリヒリします」とはお伝えしましたが「とりあえずここまま続けますね」ということだったので、その時点では「別にたいしたことではないのかな?」と思う程度でした。
最初にレーザーが当たった顎の部分はヒリヒリと痛みましたが自分では患部を確認することもできず、いつものようにトーニングを続けてもらっていたのですが、全ての施術が終わった後、「顎の部分が赤いので医師を呼んできます」と看護師さんがクリニックの院長を呼びに行かれました。
そして医師が患部を確認し、「火傷ですね」ということで看護師さんに薬の塗布とテープを貼るよう指示をされました。
顎の部分を鏡で見せてもらうと、なかなか広範囲に赤い円形の跡ができていて、「人造人間のようだな」と思いました。
その日は傷跡に軟膏を塗り、テープで覆い、傷の取り扱いについての説明を受け1週間後に再診となりました。
医療事故による被害
「レーザーの出力の設定ミスで顔面が火傷したのか」という理解で帰宅しましたが、医師や看護師の説明からは「今日は一応テープを貼っているけど1週間後にもう治ってるくらいの軽い傷」と言うような印象を受けていました。
そして夜になり「酷い跡だな、、」と思いながら就寝しましたが、翌朝、明らかに傷の色が濃くなっていました。到底このままで出勤できるような状態ではありませんでした。
絶望感を抱くも、まだクリニックの営業前の時間だったので、取り急ぎ自宅にあるテープで傷を隠し、「コロナのお陰でマスクがあって良かった」とマスクに希望を託し出勤しました。
傷は顎から耳の下にかけて広がっていたので、マスクからも時々テープがのぞいている状態でヒヤヒヤしつつなんとか初日を乗り切り、クリニックに電話をかけました。
・傷跡の色が前日より酷くなっている
・むき出しのままでは日常生活を送るのが危うい
という話をしたところ、
・傷はカサブタのようになり消えていく(ので一旦は濃くなる)
・傷を覆うためのテープをクリニックから自宅宛に送る
という回答を得ました。
この時点で「え、傷が濃くなるとか聞いてないし。しかもその経過だと1週間後に綺麗に治ってる可能性低いよね?」とかなり絶望的になりました。
その後は手持ちのテープやクリニックから送られてきたテープなどで色んな傷の隠し方を試してみましたが、あまりにも範囲が広く、何をしても目立ちます。
また、傷の治りが悪くなるのでコンシーラーなどは使ってはならない、と言われ、さらに絶望的な気分に…。
しかも1ヶ月経って傷が治っているという保証もない、とも言われ、相当落ち込みました。
これがその頃の必死でテープを貼っている状態です。この上にマスクをして、マスクを顎の下までひっぱって覆っていました。
テープやマスクで隠したとて、職場で昼ごはんを食べたり、どうしてもマスクを外す機会は出てきます。
特にこの傷が目立っていた1ヶ月くらいの間は、休憩の時間をずらしたり、ものすごく感染対策意識が高い人のようにマスクを着脱しながら食事をしたり、知人に遭遇しても見えにくいようにと傷がある側が壁になる席を選ぶなど、かなり神経質になっていました。
また、ヘアカットや友人と会う約束をキャンセルするなど生活する上でのストレスは避けられませんでした。
火傷の傷が落ち着くまではクリームや日焼け止めなども使用してはいけないなど指示もありましたので、顔面に対しても過度に気を遣わなくてはならず、「肌を美しくする目的でレーザーをしたのに、逆に醜くなって辛すぎる」と思っていました。
▼傷をカバーするためのテープは、以前シミ取りレーザーの時に購入していたものを使いました。
傷の経過
幸い、火傷の傷跡に関しては変に膿んだり炎症を起こしたりすることもなく、色素沈着もなく、必死で隠しながら徐々にカサブタも剥げていき、2ヶ月くらいで元の状態に戻りました。
しかし、円形の傷は合計で6箇所ありましたが、それぞれの治りは均一ではなく、色が薄くなっていくのが早いところもあれば、いつまでも赤みがあったりなかなか乾燥しない傷もあり、気を揉みました。
火傷から1ヶ月くらいして傷がしっかり固まってきた頃にはもう軟膏の塗布もテープも必要なくなり、マスクだけで隠せるようになり随分楽になりましたが、このまま跡が残ったらどうしようという不安がありました。
マスクが擦れることで色素沈着が起こったらどうしよう、というのも心配でした。
しかし、触ったり、クリームや日焼け止めを塗ることを我慢したことが功を奏したのか、火傷から1年以上経った今は跡はまったく気になりません。
美容皮膚科の対応
レーザーで火傷を負った当日から数日は何が起こったのか分からず、とにかく火傷の跡を綺麗に治したくて医師の指示に従っていましたが、日常生活にも支障を来すような元々無かった・不要な傷を隠しながら不安とストレスを抱えていることがしんどくなり友人に相談したところ、「医療ミスなんだし、賠償請求できるのでは?」と知り合いの弁護士を紹介してくれました。
その旨をクリニック側に伝えたところ、「ではお互いそれぞれ弁護士に相談しましょう」という流れとなり、最終的にクリニック側からは以下の対応をしていただきました。(弁護士とのやり取りや賠償請求の内容については次項目にまとめます)
・火傷の治療に係る治療費の負担(交通費や駐車場代が必要な場合はその費用負担も)
・レーザー治療の回数券の未実施分の返金
・請求した賠償金の支払い
結果として、私の場合は友人知人のお陰で泣き寝入りすることなく賠償請求することができ、またクリニック側もこちらの申し出に対し真摯に対応してくださった為、穏便に治療を終えることができました。
また、幸いに傷も跡が残ることなく通院し続ける必要もなかったため、「もう大丈夫でしょう」と言われた後は皮膚のトラブルも生じていません。
この辺りはクリニックや対応してくれる医師によるところもあると思いますので一概に言えませんが、患者側も医療者側もそれぞれが弁護士と相談し、お互いの主張や請求額等に齟齬がなければスムーズにやり取りができるものなんだなと学びました。
繰り返しになりますが、これはあくまでも私個人の経験談ですので、それぞれのケースで対応は全く変わってくると思います。いくつもあるトラブルの中のたったひとつのサンプルとして、参考程度に読まれてください。
弁護士への相談
私の場合は、まず「傷を負った事で心身共にきつく生活にも支障をきたしている。よって賠償請求したいので弁護士に相談しても良いか」ということを診察の際に医師に尋ねました。
それを受けて医師は「弁護士に依頼してもこういった場合慰謝料のようなものは少額になると思うが、希望があれば依頼してください。その場合、こちらも弁護士に相談しますね」というような回答をされました。
そこで、知人の弁護士に今回の医療事故について相談し、請求できる賠償金額と内容について回答をもらいました。
そして、クリニック再診の際にその回答書を持参し、弁護士から写しをクリニック側に渡してもよいと言われていたので、医師に提示しました。
細かい内容については各ケースで異なると思いますので、医療事故やミスで困っていらっしゃる方は具体的には担当の医師や弁護士にお尋ねいただきたいのですが、このような医療事故の賠償金の請求の基準は、基本的には交通事故の基準で良いということのようです。
しかし実際の裁判例を見ると、認容される額はそれよりも低い場合もあるようですし、例えば後遺症が残ってしまった場合(「後遺症慰謝料」)や、仕事を休んで通院しなければならない場合(「休業損害」)などについても個別に対応がなされる可能性もあるそうです。
私の場合は、後遺症も残らず仕事に支障を来すことも少なかったこと、そして仕事が休みの日に通院していたため、民事交通事故訴訟における「損害賠償額算定基準」に沿って火傷の治療に掛かった期間の慰謝料を請求することとなりました。
私個人の支払いとしては、弁護士への相談費用(これは各弁護士事務所によって異なると思います)が発生しましたが、クリニックが火傷に対する過失を認め、こちらのストレスを理解してくれ、治療の為に通院しなければならなかった期間の賠償請求額を支払ってくれたので、結果的にモヤモヤが晴れ、弁護士に依頼して良かったなと思えました。
尚、弁護士からは、医療事故の場合は「ミスがあった」という証拠が必要になるケースがあるので、例えば診断書や、協議内容についてボイスレコーダーで録音するなど、先方の過失を証拠化しておく事をお勧めする、とアドバイスいただいたことも備忘録的に記しておきます。
そして現在…
火傷から2ヶ月経った頃には、傷跡はやや皮膚が引き攣ってはいましたが一瞥してもほぼ分からないほどに薄くなり、1年以上経った現在ではもう全く気になりません。
この事故の後、しばらくの間は美容皮膚科へ行くことを躊躇っていましたが、1年経過した頃には別のクリニックでハイフの施術を行うなど、今は普通に美容の治療を行なっています。
一度顔面に傷を負うと心身ともにかなり大きなダメージを負いますが、医療事故に遭うケースは稀なので逆に勉強になったと今は思えています。
自分の肌の状態にどのような治療が向いているのか、ということについてはクリニックで施術を受ける前に結構調べてから臨んでいましたが、医療事故については全く無知でした。
ミスは何にでも起こりうるので、知識として持っておくと、何か起こった時の焦りとショックが0.5%ほど軽減するかもしれません。。
しかし、「美しくなりたい!」と思って逆に醜くなった時のショックは言葉ではなかなか表現できません。
何か起こった時、「このクリニックなら、この医師なら誠意を持って対応してくれそうだ」という施術場所を選ぶと言うことも自衛するという意味では大切かもしれません。
※重ねてになりますが、この記事は一個人と一クリニックのたった一つの医療事故対応のサンプルに過ぎません。
似た部分があったとしても、全てのケースで対応や治療経過は変わってくると思いますので、参考程度にとどめていただき、万が一医療事故やミスに遭遇してしまった場合は、信頼できる弁護士や医師など専門家にご相談ください。